前田、PO制し涙の初V

 伊藤園レディス最終日(16日、千葉・グレートアイランドC=6639ヤード、パー72)首位と1打差の3位から出た前田陽子(29)が70で回り、通算9アンダーで並んだ大城さつき(25)=ともにフリー=とのプレーオフを制し、ツアー初優勝。今年1月まで7年間、時給750円からのアルバイトで生計を立てていたプロ9年目が、V賞金1800万円をもぎ取った。1打差の3位に上田桃子(28)=フリー=が入った。

 あふれる涙はもちろん「ネピア」でふいた。王子製紙の関連会社で働きながら、この日が来ることを信じていた。29歳の苦労人がシンデレラストーリーを完結させた。

 「本当に優勝したんだと思ったら涙が出ていた。プレーオフはステップ(下部ツアー)で一度負けていた。同じことを繰り返したくなかった」

 決めれば勝てた18番(パー4)の2・5メートルのパーパットを外し、再び18番でのプレーオフへ。2ホール目で大城を制した。20メートルのバーディーパットを50センチに寄せ、先にパーセーブ。1・5メートルを残していた相手に重圧をかけ、ボギーを誘った。

 昨季までの生涯獲得賞金は73万8000円。今年1月まで7年間、地元・徳島の段ボール工場でアルバイトもしていた。今季ツアー参戦権をつかみ、帽子に「ネピア」のロゴが入った。スポンサー契約してくれた“古巣”にも恩返しができた。

 「自分だけだったらやめていたかもしれない。支えてくれた人に感謝したい」。昨年弟子入りした今堀りつ(65)も恩人だ。日本女子最多の482試合連続出場を誇る“鉄女”からは前夜、電話で「踏ん張りどき。あした頑張れば来年も試合に出られるよ」と激励された。

 アルバイトを始めた当初の時給は750円。18ホールを5時間で、3日間回ったと単純計算すれば、今大会の労働時間は15時間。V賞金1800万円は時給120万円となり、1600倍にふくらんだことになる。

 もちろん、苦しい練習に時間を費やしてつかんだ栄冠だ。ただ26日に30歳の誕生日を迎える前田は、屈託なく笑った。

 「賞金? 格好いい外車を買いたいです」

 涙が乾いたシンデレラへ、ギャラリーから大きな拍手が降り注がれた。



2014年11月17日 Posted by栗林 at 11:36 │Comments(0)

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